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第二章 第八十話 後宮の外にも地獄がありました

last update 게시일: 2026-10-26 10:54:44

第二章 第八十話 後宮の外にも地獄がありました

 韓徳元の名が記された釈放命令書を見つけた時、私はすぐに戸部へ乗り込もうとしたのだけれど、それを止めたのは景黎様でも方玄でもなく、珍しく蘭々だった。

「鈴花、今その顔で韓尚書のところへ行ったら、最初の三言くらいで『あなたが逃がしたんですか』って言うでしょ。それで韓尚書が『証拠は?』って返して、鈴花が余計に腹を立てて、結局また二人で難しい話を始めるから、先に何が起きたのか調べた方がいいよ」

「私はそこまで短気ではありません」

「うん、鈴花は怒鳴らないもんね。静かに刺すだけで」

「人聞きの悪い言い方をしないでください」

「でも、韓尚書本人が自分の印を勝手に使われた可能性もあるでしょう」

 蘭々にそう言われて、私は返す言葉を失った。ほんの数日前なら「とにかく本人へ聞きに行けばいい」と言っていた人が、いつの間にそんな慎重な考え方を覚えたのだろう。

 方玄も驚

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    第二章 第七十八話 名前は売れる 翌朝、紅珠に「お母さんが来ています」と告げるまで、私は何度も頭の中で言い方を考えていたのだけれど、結局、気の利いた言葉など一つも思いつかなかった。 母親が娘を三年間死んだと思っていたことも、昨日は役人の前で「娘ではない」と嘘をついたことも、その理由が弟を殺すと脅されたからだったことも、銀十両を受け取って生活のために使ったことも、どれか一つだけなら説明できる。しかし、それらが全部同時に存在しているのが人間で、ひとまとめにして「お母さんも仕方がなかったのです」と言えば紅珠を傷つけるし、「あなたを裏切った母親です」と言えば梅春の三年間を削ってしまう。 だから私は、医療房の寝台で朝の薬湯を嫌そうに飲んでいる紅珠へ、余計な飾りを付けずに言った。「紅珠さん。お母さんが、昨夜ここへ来ました」 紅珠の手が止まった。 椀の中で、薄茶色の薬湯が小さく揺れる。「……母さんが?」「はい。柳根村から一人で来ました」「どうして?」「あなたに会うためです」「私のこと、娘じゃないって言ったんですよね」 予想していた。 それでも胸が痛む。「役人には、そう言いました」「じゃあ、何で会いに来るんですか」「それを、お母さん自身から聞きますか」 紅珠はすぐには答えなかった。 薬湯の椀を膝へ置いたまま、唇を引き結んでいる。十四歳の子供らしい顔と、大人を信用しない人間の顔が、同じところにあった。「鈴花さんは、もう聞いたんですか」「聞きました」「じゃあ教えてください」「私から聞くのと、お母さんから聞くのでは違います」「でも、母さんが嘘つくかもしれない」「その時は、私たちが

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    第二章 第七十五話 帳簿の方が人間より偉いそうです 戸部尚書・韓徳元という名を見つけたからといって、すぐにその人を犯人だと決めつけられるほど、世の中は親切にはできていなかった。 むしろ厄介なのは逆で、偉い人間の名前が一枚の書類に書かれているだけでは、何の証拠にもならないことである。戸部尚書ともなれば、本人が一日に目を通す書類だけでも相当な数になるらしく、最終的な承認印を部下が管理することも珍しくないのだと方玄は説明した。つまり、韓徳元本人が紅珠の戸籍を知っていた可能性もあれば、知らないうちに名前だけ使われた可能性もあり、あるいは全部知った上で「私は部下を信じて印を預けていただけです」と言い逃れることもできる。「それって、偉くなるほど自分の名前で何をされても知らなかったって言えるってこと?」 還名房へ戻る途中、蘭々へ事情を話すと、彼女は露骨に嫌そうな顔をした。「そんな便利な話ではありません」 方玄がすぐ訂正する。「官印の管理責任がありますから、勝手に使用されたならそれ自体が問題になります。ただ、印があるというだけで本人が不正を指示した証拠にはならない、と言っているのです」「でも、紅珠を死んだことにした戸籍があって、その死人が結婚して、土地までもらって、その全部を戸部が通してるんでしょ?」「そうです」「じゃあ戸部が悪いじゃん」「戸部という役所全体を一人の人間みたいに扱わないでください」「でも戸部でしょ?」「そういうところです、あなたの悪いところは」「何、その言い方」「そのままの意味です」「方玄って私にだけ厳しくない?」「あなたが私にだけ話を最後まで聞かないからです」「鈴花、方玄がいじめる」「二人とも歩きながら喧嘩しないでください。人に見られます」「もう見られてるよ」

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